【コラム】Vol.02 猫さんと雨 / 猫さんに関するあれやこれや
Vol.02 猫さんと雨
こんにちは!猫とも新聞です。
じとじとムシムシじめじめベタベタ…。今年も梅雨の季節がやってまいりました。猫さんはもともと砂漠の動物。湿気は苦手です。雨の日は寝起きも悪く、一日中家でゴロゴロ…。
猫さんと雨の関係を、猫とも新聞13号の巻頭記事から抜粋してご紹介してまいりましょう。
猫さんはなぜ水ギライ???
猫さんが水ギライなのは、みなさんご存じの通り。もともとの出身は砂漠だからというのもありますし、水をあまり必要としない身体です。尿路結石などが心配ですから、たくさん水を飲んでほしいですけど。
猫が水嫌いである理由に「猫っ毛だから」という説もあります。
陸上の小動物をエモノとしていた野生時代、水に入る必要が少なかったためでしょうか。猫さんの毛は油分が少なく、あまり水をはじきません。猫さんの体毛は、ワンコと同様「上毛(刺毛)」と「下毛(綿毛)」の二層構造になっていますが、どちらもワンコと比べると柔らか。皮脂腺から分泌された脂分が十分にいきわたらないため、水をはじきにくいのです。ですから、全身を舐めて乾かすまでずいぶんと時間がかかります。濡れたままでは体温が低下してしたり、風邪を引いてしまいます。寒暖差の激しい砂漠地帯では、気化熱で体温が容赦なく奪われてしまいます。だから、猫さんは濡れることを嫌がるのです。
雨と体調
北海道大学の木下眞二名誉教授と高橋香織名誉教授による「気圧変動の血圧に及ぼす影響」では、なんと2万人もの学生について、天候と血圧の関係について調べています。これによると、血圧は低気圧が来る前日にすでに上昇しているのだそうです。
雨の日に猫さんがおとなしいのは、狩猟時代、雨の日に出かけていってもエモノが少ないことを本能的に覚えているからといわれますが、気圧も大きく関係しているはず。猫さんは繊細な動物ですから、気圧の変化に敏感です。気圧の下がる雨の日は、なんとなくアンニュイなのでしょう。
木下先生も、ご自分のホームページで「ネコの耳管も(気圧の絶対値ではなく)低下しつつある気圧変動を敏感に感じて、耳の部分の不快を感じるものと思われる」と書かれています。
野良さんも素早く雨の気配を察して、物陰に身を潜め、雨の上がるのを待ちます。
てんかん発作を持つ猫さんの場合、低気圧は発作を誘因しますので、ことは深刻です。安静を心がけてあげましょう。
猫で雨乞い!東南アジア
2010年7月の朝日新聞に『猫が鳴き 雨を呼ぶ』という記事が載りました。タイで約30年振りに猫を使った雨乞いの儀式が行われたという内容です。(朝日新聞2010年7月24日(土)国際面)
同記事によると、場所はタイの北部ピチット県ファククロン村。雨乞いには、猫さんを籠に入れて村中を回り、村人がそれに水をかけるといいます。これを3日間続けると「耐えかねた猫の鳴き声が雨を呼ぶ」らしい。猫さんはたまったものではありません。
猫を可哀想に思って出し渋る飼い主を「一匹のノルマは一日だけだから」と説き伏せてなんとか猫を3匹確保。実際にちょろっと雨が降ったそうです。
こういった「猫で雨乞い」の風習は、東南アジアに多く見られます。以下は『猫と魔術と神話事典』(M・オールドフィールド・ハウイ=著)より引用です。
●インドネシア スラウェシ島南部
猫を椅子籠に入れてかつぎ、乾ききった場所を3回歩き回り、竹の水鉄砲で猫をずぶぬれにする。猫が鳴いたところで「おお神よ、雨を降らせたまえ」。
●マレーシア
女性が土鍋を逆さにして頭に載せてから地面に置く。鍋を水で満たして猫を入れ、溺れそうになるまで沈めると、ほどなく大雨が降る。
●ジャワ島
一匹の猫、もしくはオスメス一匹ずつ二匹の猫を水浴させる。音楽を奏でながら行われることも。
●ジャカルタ
子どもたちによって猫をいったん池に沈め、引き上げる。
●スマトラ島
村の女たちが薄着で集まり、川に入って水の掛け合いをする。このとき、黒猫を川に放り込んで泳がせる。猫は、岸に上がったところで解放される。
う~ん。あんまりだ。これらの地域が干ばつに襲われないよう、心から祈ります。
とはいえ、先のタイと同様に、もう廃れた風習だと思われます。
※参考文献『猫と魔術と神話事典』(M・オールドフィールド・ハウイ=著 鏡リュウジ・真喜志順子=訳 柏書房)2,625円(税込)
「顔を洗うと雨」ってホント?!
「猫が顔を洗うと雨」といいますが、ほんとなんでしょうか。一方で「猫が顔を洗うと晴になる」という地方もあるようです。
そこで、『天気予知ことわざ辞典』の中から「猫で雨を予知」の項目をリストアップ・
【岩手】
猫が顔をなぜると近く雨が降る
【長野】
猫が顔を耳越しになぜると雨
猫が草を噛めば遠からず雨あり
猫が槍を立てる(※)と天気悪くなる
猫の茶碗を洗うと雨
【福井】
猫が顔を撫でると雨 背中から頭を撫でると大雨
猫がお尻を舐めると雨
猫が顔を洗い耳までしか撫でないときは雨
猫が手を舐めて顔を撫でるときは雨
猫が手を耳の後ろから回して顔を洗うときは雨
猫が耳のうしろまで顔を洗うと雨
猫が毒物をかむと雨が降る
猫が飛んで座ると雨
猫が日中地面に寝て転がるときは雨
猫が喉咽のあたりをなでると雨
猫が鼻を上にして寝ていると明日は雨
猫が糞に土をかぶせぬ時は雨近し
猫が屋根に上ると雨
三毛猫が顔を隠して寝ていると雨
【京都】
猫が顔を隠して眠ると雨
【岡山】
猫が穴を掘ると雨
猫が後足を上の方に挙げると雨
猫が嘔吐すると雨が降る
猫が顔を洗うとき耳以上を洗うと雨が降る
猫が騒ぐと嵐または雨
猫が終日眠るのは翌日雨
猫が手で耳をこするときは雨
猫が手をかざして眠ると雨が降る兆し
【佐賀】
猫の屋根乗り雨を待つ
【長崎】
猫がさかんに走り回るのは雨の兆し
【熊本】
猫が鼻を上にして寝ていると明日は雨
岡山や福井のことわざが多いのは、編者のフィールドワークの範囲によるものと思われます。
この本の中で、編者は「猫が顔を洗うと雨」ということわざについて「実際にこれについて調べた結果を見ても、必ずしも当たるとはいえない」と書いています。残念ながら、その調査がいつどこで行われたのか不明ですが、「ある調査では、猫が耳をこすると雨となる確率は54%で晴になる確率は15%」。
当たるも八卦当たらぬも八卦。猫さんには天気予報などの余計な仕事をさせずに、ただただ愛でて暮らすのが吉でございましょう。
秋の雨は猫の毛雨
四季の国・ニッポンでは、雨ひとつ取ってもたくさんの呼び方があって、ひとつひとつ風情がありますよね。
秋に降る霧のように細かな雨を、宮崎県日向あたりでは「猫毛雨」というそうです。「ねこんけあめ」と読みます。確かに、柔らかで細かい、しっとりした雨は「猫毛」を連想させますよね。
日本国語大辞典によると、同じ言葉でも佐賀まで行くと「小雨」とやや大きなとらえ方に。
福岡では「ねこげあめ」もしくは「ねこぎあめ」と読んで、こちらはちょうど今頃、梅雨時の細かな雨を指すそうです。雨の少ない冷涼地が適する小麦作りには望ましくない雨で、麦農家の人々に嫌われるとか。
猫と犬とが降ってくる
英語で“Cat-and-Dog”というと、ずばり「犬猿の仲」。これがお天気用語になると“It’s raining cats and dogs”となって「土砂降り」という意味になります。オックスフォード英語辞典によると、語源として①古フランス語の「滝」を意味するcatdoupe ②急な土砂降りで逃げ惑うロンドンの野良犬・野良猫の姿 ③猫が天気に影響を及ぼすという北欧神話 の3つをあげているようです。北欧神話では、猫さんが雨を降らせ、ワンコが風を呼ぶことになっているんだとか。
食中毒にご用心!!
湿気が多く、細菌が繁殖しやすい季節です。食べ残しはいつまでも置いておかないで早めにかたずけて、食器は清潔にしておきましょう。
食中毒はサルモネラ菌、ブドウ状菌、ボツリヌス菌、病原性大腸菌などの感染により起こります。潜伏期間は2~20時間といわれておいて、食中毒にかかった猫さんには、元気はなくなる、背を丸める、高熱、反対に平熱以下で体が冷たい、腹痛、下痢、嘔吐の症状が現れます。重症になると脱水症状に陥り、生命に危険を及ぼす事も少なくありません。
腐敗しやすい食餌を早く片づける事はもちろん、飲み水にも注意しましょう。食事の時に飲んだ水は、フードが混ざっているため菌が繁殖しやすいので、こまめに取り替えて、いつでもきれいな水は飲めるようにしてあげてくださいね。
●フードは密封保存
ウェットならきちんとフタができる容器に。カリカリなら密封クリップやファスナー付き保存袋に入れて。乾燥剤などを利用しても。
●お水はつぎ足ししない
特に梅雨場の注ぎ足しはNG。間違っても硬水のミネラルウォーターはあげないで下さいね。マグネシウムの過剰摂取となるおそれがあります。
梅雨時は皮膚疾患にご注意を!
シトシトじめじめムシムシべたべたと鬱陶しい季節は、皮膚の異変にも注意してあげてください。
グラフは、アニコム損保さんの「家庭どうぶつ白書2018」からのデータ。猫さんの皮膚疾患にかかる請求件数を月別に集計したものです。猫さんの皮膚病は、これからの季節がピーク。しかも、梅雨時はノミやダニも増える季節であります。完全室内飼いの猫さんでも、人の手を介してノミの卵を持ってきてしまう可能性がありますし、耳に寄生するダニや細菌にも注意したいところ。
こんな症状が出たら獣医師さんへ!!
痒がる
毛が抜ける
皮膚が赤くなる
フケがでる
かさぶたができる
皮膚に発疹(ブツブツ)ができる
●お耳のお掃除
定期的なブラッシングで、猫さんのお肌を清潔に保ってあげてください。お耳も、外耳部分に黒っぽい耳あかが目立つ場合は、カット綿や綿棒などでお掃除してあげましょう。痒がる、毛が抜ける、皮膚が赤くなる、フケがでるといった症状が見られたら、早めに獣医師にご相談くださいね。
記事協力 / 猫とも新聞
2019年6月22日更新