【コラム】Vol.06 しっぽの誘惑 / 猫さんに関するあれやこれや
Vol.06 しっぽの誘惑
台風15号並びに17号・19号により被害を受けられた皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。一日でも早く、元の日常に戻れますよう。
このコラムがせめてひとときの慰みになればと願って止みません。
今月お送りしますのは、猫さんのカラダシリーズ・第3弾「しっぽ」です。ときには自信満々にピンとまっすぐ立てて、ときにはのんびりゆらゆら揺らして…。さまざまな表情を見せるしっぽの魅力について、猫とも新聞24号の巻頭記事を改訂・補足してお届けします。
なくてもいいもの?
世の中にはいろんなことをいう人がいるもんで、「あってもなくても猫のしっぽ」という言い方があります。ことわざ辞典などですと、単に「猫のしっぽ」とも言います。要するに、「あってもなくてもいいことの例え」なんですと。
しか~し、そんなことはありません。
猫さんのしっぽはよく動く。よくしゃべる。。怒ってるときは激しく、のんびりしてるときはゆったりと。ご用があるときはくねくねと。甘え上手な猫さんのしっぽ。時には親猫が仔猫を遊ばせるオモチャになったり、眠るときは夜具代わりにも。寝ていて眩しかったりすると、しっぽがシェード代わりに使われます。
いろいろと役に立つ猫さんのしっぽが「なくてもいい」とはなにごとでしょう。
そんな猫さんのしっぽですが、毛の具合によって、先端が筆のようにスッと細くなっているものやガマの穂のように丸くなっているもの、長毛種では扇状に広がる豊かな飾り毛を持つものもあります。
しっぽの長さは、フルレングスでだいたい25~30cm。ほぼ体長と同じです。このフルレングスが「長尾」と呼ばれますが、その半分くらいの「中尾」、日本に多かったといわれる5cm程度の「短尾」、しっぽが始まる部分に凹みのある「尾なし」などがあります。
尾の長さは遺伝によるものですが、長さだけでなく、先っぽが曲がっている「カギしっぽ」も遺伝によるもの。
原種とされるリビアヤマネコは「長尾」ですから、しっぽの規定値は体長と同程度の長さだと推測されます。
でも、ご安心ください。
短尾でも尾なしでもカギしっぽでも、日常生活に支障はありません。
抜群のバランス感覚としなやかな肉体で、短尾ちゃんも尾なしちゃんも見事な身体能力をみせてくれます。
美しい長いしっぽも、ちょんちょこりんのまん丸尾っぽも、どれもかわいい。あ、「あってもなくても猫のしっぽ」というのは、そういう意味かもしれません。以後、猫とも新聞では「猫のしっぽ」の意味を「あってもなくてもかわいい例え」といたします。
しっぽのいろいろ
先が細くなった筆型
先っぽが丸くなったガマの穂型
短尾の代表・ジャパニーズボブテイル
長毛種の華やかなしっぽ
しっぽの構造
【骨と神経】
猫さんのしっぽは「尾椎(びつい)」という骨が並んでできています。尾椎の数は、しっぽの長さによって異なりますが、長尾の仔でだいたい18~20個。尾椎同士はゆるい間隔でつながっているので、しなやかな動きが可能になっています。尾骨は、仙骨で脊椎と連結されていて、神経も尾の先端まで通っています。
ムリに引っ張ったりしてキズつけないように注意しましょう。
【筋肉】
骨の周りには、しっぽを動かすための筋肉がついています。
●内背側仙尾筋(ないはいそくせんびきん)
右と左があって、この筋肉を左右同時に収縮させるとしっぽが上に上がります。片側だけ収縮させると、斜め上にあがります。
●尾横突間筋(びおうとつかんきん)
尾椎一つ一つに付いていて、微妙な動きや「くねり」動作などをします。
●外背側仙尾筋(がいはいそくせんびきん)
前に挙げた2つの筋肉・内背側仙尾筋と尾横突間筋が筋が損傷を受けたとき、この筋肉が補完します。
●直腸尾筋(ちょくちょうびきん)
左右同時に収縮すると、しっぽを体の下に巻き込むことができます。
●外腹側仙尾筋(がいふくそくせんびきん)
左右同時に収縮すると、しっぽが真下にさがります。どちらか側だけ収縮すると、斜め下方に下がります。
●内腹側仙尾筋(ないふくそくせんびきん)
前2つの筋肉・外腹側仙尾筋と直腸尾筋が損傷を受けたとき、この筋肉が補完します。
【しっぽの役割】
猫さんのしっぽにはさまざまな役割があります。ここでおさらいしてみましょう。
●バランスを取る
左の写真は獲物を狙って飛びかかる寸前の猫さん。足場の悪い場所からのジャンプでも、シッポで上手にバランスをとっています。
●マーキング
猫さんのフェロモンはしっぽの付け根にも分泌線があって、飼い主さんにしっぽをすりすりしてくるのは「俺の」「あたしの」という印をつけるマーキング行為。外猫さんの場合、茂みの中を通り抜けるときなど、しっぽがふれることで縄張りを主張できるのです。
●おしゃべり
猫さんの気持ちとしっぽは連動しています。気持ちがゆったりしているときはしっぽの動きもゆったり大きく、気持ちが焦ったり動揺しているときはしっぽの動きもせわしなくなります。
●寒いときの夜具
寒くて丸くなっている猫さんは、しっぽをしっかりと体に巻きつけて眠ります。しっぽを夜具とかマフラーの代わりにして暖を取っているのですね。
●仔猫をあやすおもちゃ
しっぽをふりふりして仔猫をあやすのは、母親だけとは限りません。血がつながっていなくても、大人の猫さんが仔猫をあやしている姿は、多頭飼いの人ならよく見る風景です。
私のこと好き?しっぽ診断
お腹を上にして猫さんを抱っこしたとき、猫さんのしっぽはどんな具合?しっぽでアナタへの気持ちが診断できます。
ヤダヤダヤダヤダ
抱かれると、バタバタシッポを動かすのは嫌がっているとき。シッポの動きそのままにじたばたしたい気持ちなのです。
怖いよう
シッポがお腹にピッタリくっついているのは怖がってる証拠。大事なお腹を外敵から隠すポーズです。恥ずかしがってるワケじゃありません。
悪い気持ちはしないねぇ
シッポが垂れ下がっているときは、リラックスしているとき。気持ちもシッポもゆったりゆらゆらいい気持ちです。
わぁい うれし~♪
シッポをゆっくりと動かしている時は、のんびりとして気持ちいいとき。アナタに抱かれてうれしいなぁとシッポでハミングしています。
しっぽ語事典
ピンと立てる
しっぽをピーンとまっすぐに立てているときは甘えんぼモード。ご飯がほしいとか、「なでて」「かまって」とかご用事があるときなので、きいてあげてくださいね。
ピンと立てた先端を相手に向ける
しっぽの先をやや前向きにするのは、ご挨拶。フレンドリーな気分のときです。このシッポの形が「?(クエスチョンマーク)」のデザインの元になったという説もあります。
ピンと立てた先端を左右に振る
ピンと立てたしっぽを左右にゆっくり大きく振っているのは、威張っているとき。「オレ様は強いんだぞ」とアピール中です。
立った姿勢でしっぽを大きくゆっくり振る
なにかを見つけたときのポーズ。「なに、あれ。敵なの?オモチャなの?」と興味津々で観察中。軽い興奮状態です。
先端をピクピクさせる
獲物を見つけました。飛び掛る寸前です。
なにか考え事をしているときにもピクピク動くことがあります。
おおきくゆったり振る
ご機嫌さんです。
ゆったり動かしてると思えばピタッと止まったり、また揺らしたり。リラックスモードですのでそっとしておきましょう。
小さくすばやく振る
気ぜわしく小刻みに振るのはイライラモード。なにか不満があるのかもしれません。
ゆっくりタテにパタンパタン
今日はこれからどっしよ~かな~なんて感じでこれからの予定を考えているとき。
強く床に打ち付ける
パッタンパッタンと音を立ててしっぽを打ち付けるのは、かなりご機嫌ナナメ。そっとしておくのが一番です。
山型に持ち上げる
しっぽを持ち上げてカラダを大きく見せるのは、攻撃的な状態。相手を威嚇しているのです。
膨らます
びっくりすると、反射的に大きく膨らみます。
喧嘩のときなどは毛を逆立ててしっぽを膨らませ、相手を威嚇します。
カラダの下に巻き込む
びびってる証拠です。体も小さくして、全面降伏。「こんなにちっちゃいんだからイジメないで」のアピールです。
だらりと垂らす
叱られてしょんぼりしてるときは、気持ちもしっぽも下を向きます。
具合が悪くて元気がない場合もあるので、気をつけてあげてください。
寝たまま先端だけ動かす
名前呼ばれたけど、起きるのはメンドくさ~い。しっぽで返事だけすればいいや。
眠っているのに先端だけ動く
すっかり夢の中でも、しっぽで返事をするときは、大好きな人の声をきいてうれしい気持ち。
記事協力 / 猫とも新聞
2019年11月25日更新