【コラム】Vol.07 可愛く咲いた猫さんのお鼻 / 猫さんに関するあれやこれや

猫に関するあれやこれや

Vol.07 可愛く咲いた猫さんのお鼻

いよいよ令和元年も年の瀬。早いものです。
今月は、猫さんのカラダシリーズ・第4弾「鼻」をお届けします。あの小さくて可愛い鼻に秘められた、驚きの事実とは。猫とも新聞59号の巻頭記事を改訂・補足してお届けします。

 

ネコセカイ可愛く咲いた猫さんのお鼻

撮影協力:東大宮「猫の部屋」

 

お鼻をよ~く見てみよう!

猫さんのお鼻をじっくり観察したことはありますか?人の鼻と比べると、とっても不思議なカタチをしています。
ふつう「猫の鼻」といわれると、先端の三角形だけを思い起こしがちですが、眉間の辺りから鼻は始まっています。下の写真で確認しましょう。

ネコセカイ可愛く咲いた猫さんのお鼻

ふだん気にしていない方ほど、案外、鼻梁が長いことに気づくのではないでしょうか。
どこから鼻なのかは、触ってみると毛の流れですぐわかります。眉間から上は、毛の流れが頭に向かっていますが、鼻梁の毛の流れは鼻先にむかっているんです。
以前、取材した男性は、鼻の始まる地点の、毛の流れがかわる部分をなでるのが好きとマニアックなことを言っていました。
五分刈りの坊主頭を撫でているのにちょっと似た、独特の手触りなんです。
そして、人間でいうと鼻柱にあたる部分は毛が生えていません。
ここは「鼻鏡(びきょう)」といって、たいていしっとりと湿っています。
人の鼻の穴は、前部分しか空いていませんが、猫さんの鼻は横にまで切り込みが入っています。人でいうと小鼻にあたる部分まで溝が入っていますよね。これが「外鼻溝(がいびこう)」です。
鼻鏡の途中から口に至るところにも溝「上唇溝(じょうしんこう)」があります。
人にも、「人中(じんちゅう)」と呼ばれる溝がありますよね。これは、〝痕跡器官〟といって、昔は役に立っていたかも知れないけど今は名残しか残っていない部分ですが、猫さんの場合はしっかりと現役で役立っています。(詳しくは「なぜお鼻は冷たいの?」の項参照)

 

ネコセカイ可愛く咲いた猫さんのお鼻

 

お鼻の大事な役割

母と仔を結ぶ絆

生まれたての仔猫は、目も見えなければ耳も聞こえません。唯一の情報源が嗅覚なのです。
寝床から転げ落ちて、ママと離れてしまったとき、赤ちゃん猫はニオイだけをたよりに、ママの元へと戻ります。
最初におっぱいを飲んだときには、8つある乳首のうち、自分の飲んだ乳首のニオイを覚えます。そして、自分だけのニオイをつけて、「この乳首はボクの」と印を付けます。
こうしておけば、次の授乳の時も、他の兄弟とケンカすることなく、すぐに自分専用の乳首からおっぱいを飲むことができますよね。
生まれ落ちてすぐの仔猫と母猫を結ぶものは、お互いのニオイなのです。

 

ニオイの記憶

動物行動学者のブルース・フォーグル博士は、「食べ物に関しては、ネコはイヌよりうるさい」と書かれています。
フォーグル博士によると、猫さんの食欲は、見た目よりニオイによって刺激されるのだそうで、特に肉の脂肪のニオイには敏感なのだそうです。このニオイの記憶は、一生、脳に記憶されていて消えることはありません。
また、猫さんの鼻は窒素化合物を含むニオイにも敏感。少し傷んだ食べ物はアンモニアや硫化水素のように窒素の多い化学物質を発散します。
おいしかったニオイの記憶と腐ったニオイ。猫さんは、ニオイで食べものを判定しているんですね。
兄弟猫や同じテリトリーに住む猫、飼い主さんのニオイも記憶して、彼らには自分のニオイもつけて、〝親しい仲間〟の印とします。
猫さんにとって、ニオイと鼻は生きていくためにとっても大事なものなんです。

ネコセカイ可愛く咲いた猫さんのお鼻

Photo by Laitche

 

鼻の構造とニオイを嗅ぐ仕組み

猫さんのお鼻はとても小さい。鼻の穴なんて豆粒も入りそうにありません。
けれどお鼻の奥まで見てみると、鼻腔の上側にある凸凹した骨を粘膜が覆っていて、この粘膜は広げると約40平方㎝もあるんです。この粘膜は「嗅上皮(きゅうじょうひ)」といって、匂いの分子をキャッチする役割をしています。つまり、吸着シートがひだひだになって、鼻の奥に敷き詰められているとお考えください。ちなみに、人間の嗅上皮の面積は、猫さんの半分くらいしかないんだそうです。つまり、猫さんは人間の倍近いニオイの分子を捉えることができるわけです。
この嗅上皮の下には、6000万~7000万の嗅細胞がみっしりあります。人間は、500~2000万といいますから、猫さんの嗅覚がいかに優れているかがおわかりでしょう。
嗅細胞には、自分はこのニオイ担当、君はそのニオイ担当という具合にそれぞれ分担があって、普段はぼんやりしているのに、嗅上皮でキャッチされたニオイの分子が自分の担当だと、パッと元気になって、ピピッと電気信号を発します。
すると、この信号が嗅上皮のすぐ上の「嗅球(きゅうきゅう)」に伝えられます。嗅球は神経繊維の束で、電気信号はここを通じて脳に伝わります。
そして、さまざまな情報処理をされて「あ、これはあのニオイだ」と判定されるわけです。
脳内の嗅覚に関するエリア「嗅覚野」は、脂肪質で黄色っぽい色をしているそうです。そしてこの黄色が濃ければ濃いほど、嗅覚が鋭いと言われています。サイエンスライターのアキフ・ピリンチによると、人間は淡い黄色で、猫さんはマスタード・ブラウンなんだとか。
嗅上皮~嗅細胞~嗅球~脳の嗅覚野というラインナップが、ニオイを感じる器官です。

ニオイを感じる器官とは別に、フェロモンを感じるヤコブソン器官(鋤鼻器=じょびき)というのも存在します。コレについては後述しますね。

さらに、上の図にはありませんが、鼻の内側には「上唇挙筋(じょうしんきょきん)」という小さな筋肉がついています。
この筋肉を収縮させると、鼻の脇の切れ目=外鼻溝が広がります。
猫さんがニオイを嗅ぐときに、鼻をひくひくさせるでしょう。あれは、上唇挙筋を使って外鼻溝を広げ、たくさんのニオイ分子を鼻の中に取り込んでいるのです。

ネコセカイ可愛く咲いた猫さんのお鼻

 

フレーメン現象

ニオイを感じる器官とは別の、フェロモンを感じる器官。それがヤコブソン器官です。日本語では「鋤鼻器(じょびき)」と呼ばれます。
人にはない器官だと言われてきましたが、最近の研究では、人間でもヤコブソン器官を持つ人もいるのではないかという学者さんも出てきています。
このヤコブソン器官、上あごの奥にあって、液体で満たされています。ですから、ニオイを感じることはできません。主に、フェロモン様物質を感知し、解析すると考えられています。
動物学者ジョン・ブラッドショーによれば、「嗅覚と味覚の中間」にあたる機能だそうで、アキフ・ピリンチも「〝匂い〟のある物質を舌で〝なめて〟」いると表現しています。
フェロモン様物質を舌で舐め取るときは、鼻にしわを寄せて上唇をひくひくと上げ、舌を口の中でヒラヒラさせて、空気をズズッと吸い上げるような仕草をします。これは「フレーメン現象」と呼ばれます。
ヤコブソン器官はふだんは閉じているというか、意識的に情報を取り込まないと機能しないので、フレーメンすることで空気もしくは唾液を取り込んで、ヤコブソン器官を覚醒させるのです。
ヤコブソン器官では、フェロモン分子を感知して、嗅覚野ではなく、性行動を司る中枢でもある視床下部に直接、情報を送ります。

ネコセカイ可愛く咲いた猫さんのお鼻

Photo by Erin Murphy

 

お鼻の色と肉球の色

猫さんの可愛いピンクのお鼻。そんな仔は、肉球の色もピンクのことが多いですよね。
肉球の色とお鼻の色はリンクするのか?
そんな疑問を持った編集部は、猫カフェに出かけてチェックしてみました。
う~ん。確かに、鼻が黒い仔は肉球も黒いけど、鼻がピンクで肉球は黒いって仔もけっこういる。
実は、鼻の色と肉球の色はどちらも地肌の色なんだそうです。
ですから、理論上は、当然、鼻と肉球の色はリンクします。
ただ、斑模様の仔がいると、鼻と肉球の色が違ってくるのです。
ご存じのように、キジトラさんは地肌にも毛並みと同じ模様があります。ブチの仔は、地肌にもブチがあります。
お鼻のところにブチがあって、肉球にブチがなければ、お鼻は小豆色で肉球はピンクになります。
肉球がピンクと小豆のまだらになるのも同じ理屈です。

 

比べてみよう お鼻と肉球

猫さんの可愛いピンクのお鼻。そんな仔は、肉球の色もピンクのことが多いですよね。
肉球の色とお鼻の色はリンクするのか?
そんな疑問を持った編集部は、猫カフェに出かけてチェックしてみました。
う~ん。確かに、鼻が黒い仔は肉球も黒いけど、鼻がピンクで肉球は黒いって仔もけっこういる。
実は、鼻の色と肉球の色はどちらも地肌の色なんだそうです。
ですから、理論上は、当然、鼻と肉球の色はリンクします。
ただ、斑模様の仔がいると、鼻と肉球の色が違ってくるのです。
ご存じのように、キジトラさんは地肌にも毛並みと同じ模様があります。ブチの仔は、地肌にもブチがあります。
お鼻のところにブチがあって、肉球にブチがなければ、お鼻は小豆色で肉球はピンクになります。
肉球がピンクと小豆のまだらになるのも同じ理屈です。

ネコセカイ可愛く咲いた猫さんのお鼻

東大宮「猫の部屋」

ネコセカイ可愛く咲いた猫さんのお鼻

東大宮「猫の部屋」

ネコセカイ可愛く咲いた猫さんのお鼻

東大宮「猫の部屋」

 

鼻紋ってなんだ?

鼻の写真を拡大して見ると、鼻鏡の表面はデコボコしています。左の写真でわかるでしょうか。
これは、「鼻紋(びもん)」といって、ワンコや牛にもあるものです。
人間の指紋と同じで、一匹ずつカタチが異なるうえに、一生変わらないので、個体を識別する目印になるんですよ。
牛では、すでに個体識別に利用されています。
理論上は遺伝子的に同じはずの一卵性双生児や、同じ体細胞をコピーしてうまれたクローン牛であっても、鼻紋は同じではないんだそうです。

ネコセカイ可愛く咲いた猫さんのお鼻

Photo by P.Fernandes

 

鼻毛はない 鼻くそはある

ところで、バカボンのパパみたいに、鼻の穴から鼻毛が覗いている猫さんというのは見たことがありませんね。人では、女性でも、排ガスの多い都会に暮らし始めると伸びてしまうものですが、大都会の猫さんにも鼻毛は見られません。
猫の鼻毛に関する文献が見当たらなかったので、東京猫医療センターの服部幸院長にお尋ねしました。
すると、「猫さんに鼻毛はない」とのお答え。文献がないはずです。
鼻毛は、入ってきた菌などの異物をキャッチします。この異物と粘膜が固まったものが鼻くそです。
すると、猫さんには鼻くそもないんでしょうか。
「人よりは少ない気がしますが、できることがあります。健康な時は少ないですが、風邪引いたときなど鼻水が多い時には顕著になります」と服部先生。
猫さんの鼻は本当に小さいので、あまり異物は入りにくいそうです。なにかが入った場合は、くしゃみをして排出するか飲み込んでしまうと思われます。
ちなみに、バカボンのパパのあれは、鼻毛ではなく、ヒゲだそうですので、念のため。

 

ムダに高機能

猫さんの鼻は非常にハイスペック。数百の嗅覚受容体を備えています。
人の脳は3タイプの視細胞から100万以上の色を生み出せるという事実から、ブラッドショーは猫は10億種以上のニオイを区別できるのでは、としています。
ただ問題は、猫さんが生涯に嗅ぐであろうニオイの種類が10億種もないこと。オーバースペック気味だ」とブラッドショーも嘆いてます。

 

なぜお鼻は冷たいの?

猫さんと暮らしている人は、思い出してください。ふとんに入ってきたときの、あの鼻の冷たさを。
なぜ猫さんの鼻は、いつも濡れて冷たいのでしょうか。
それは、濡れていると、ニオイの分子をキャッチしやすいからです。1ページでご紹介した「上唇溝」は、毛細管現象を利用して口から鼻鏡に水分を運ぶ役割をしているんですよ。
冬場、鼻を覆って眠るのは、濡れた鼻が冷たいから。人には冷たい鼻を押しつけて起こすくせに、自分が冷たいと覆って温めるなんてずるいと思いませんか?
え、思わない?可愛いと思う?さては、あなた、猫好きですね!

ネコセカイ可愛く咲いた猫さんのお鼻

Photo by Craig Hatfield

 

大変!!乾いてる!!

いつも湿っているお鼻ですが、眠っているときやリラックスしているとき、それから寝起きは、乾いていることがあります。よく「猫の鼻が乾いていると病気」といわれますが、このような場合は心配ありません。
起きていて活動中なのに鼻が乾いているときは、発熱か脱水症状が考えられます。
鼻の乾きに加え、鼻水や鼻血、下痢や便秘、鼻のひび割れ、荒い鼻息などの症状が見られたら、すぐに獣医さんに相談しましょう。

 

鼻キス♡でご挨拶

道ばたで出会った猫さん同士が、鼻を近づけ合ってクンクン、スンスン。
ご挨拶の「鼻キス」は、鼻同士をくっつけて、お互いのニオイを嗅いでいるのです。
猫さんの顔の周りには「臭腺(しゅうせん)」といって、ニオイを発するポイントが多数集まっています。
臭腺は、額の両側、唇の両側、顎の下、しっぽ、肉球、肛門の両側などにあります。
猫さん同士だと、ここから出されるニオイから、相手に関するいろんな情報をかぎ取ることができるのです。
それで、挨拶の時に、お鼻をくっつけ合って相手の状態をチェックしているわけなのです。
人間でいうと、
「最近どう?」
「あれ。すこし太った?」
「今日は顔色イイじゃない」
といった感じでしょうか。
猫さんがあなたにも鼻キスをしてきたら、それは「おはよう、今日は元気?」のご挨拶。
でも、それが帰宅したときであれば、「どこ行ってたの」「よその猫を抱っこしてきたでしょ」「あっ、内緒でおいしいもの食べている!」などなど、いろんなことをチェックされている可能性があります。
人は、猫さんにけっしてウソがつけないのです。

ネコセカイ可愛く咲いた猫さんのお鼻

Photo by Remy Sharp

 

記事協力 / 猫とも新聞
2019年12月23日更新

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