【コラム】Vol.08 猫舌 langue de chat<ラング・ド・シャ> / 猫さんに関するあれやこれや

猫に関するあれやこれや

Vol.08 猫舌 langue de chat<ラング・ド・シャ>

2020年はニャオニャオ年、しかも令和2年はニャー年で、今年はネコ年なんだそうです。
すべての猫さんが幸せになりますように。
猫とも新聞ではそんな願いを込めて、今年も猫さんの話題をお届けします。
どうぞよろしくお願い申し上げます。

 

ネコセカイ 猫舌 langue de chat<ラング・ド・シャ>

撮影:YUE_NANAMI

 

猫舌のワケ

世間では、猫舌、猫舌と、まるで猫さんばっかりダメな仔みたいに言いますが、別に猫さんだけが猫舌なわけではありません。
そもそも自然界の動物は、みんな煮炊きをしませんので、熱々のスープやジュウジュウ焼きたてのステーキなんて食しませんよね。
猫さんだけじゃなく、ワンコさんも象さんもキリンさんもワニも金魚もみ~んな猫舌なんです。
ただ、ワンコは家の外で飼われていることが多かったし、象もキリンもそうそう身近にいる存在ではなかったので、家の中で食事する猫さんがやり玉に挙がったのでしょう。
この表現は日本独特のものみたいで、インターネット翻訳ソフトで英語やイタリア語やスペイン語に翻訳しても「NEKOJITA」とそのまんま出てきてしまいます。イタリア人なんて全員猫舌かというくらい、熱いものが苦手なのに・・・。

ところで、お燗したお酒は、温度によっていろいろ呼び名があるのをご存じですか?
ふつうに「熱燗」といえばだいたい50度前後だそうです。これが、温度が下がるに連れ、上燗、ぬる燗、人肌燗と呼ばれます。
「酒の燗は人肌で」なんて言い方をしますよね。この人肌燗がだいだい35度前後。その名の通り、人の体温とほぼ同じです。
では、猫さんの好む温度はどのくらいでしょうか。
野生時代、猫さんはネズミを獲物として食べていました。人肌ならぬ「ねずみ肌」がお好みの温度です。
食べ物や飲み物が30度くらいのときに、いちばんよく味がわかるといわれています。
猫舌だからといって、冷たければいいというものではないんですよ。

 

猫舌のお菓子

薄くて繊細な猫の舌は、パティシエの創造力をかき立てるようで、フランスには「ラングドシャ(langue de chat)」というクッキー、ドイツには「カッツェンツンゲン((Katzenzungen)」というチョコレート菓子があります。どちらも直訳すれば〝猫の舌〟という意味です。
ラングドシャはたっぷりのバターと同量の粉糖を使った薄焼きのクッキーで、軽く、口の中で溶けるような食感が特徴。北海道銘菓の「白い恋人」は、ラングドシャでホワイトチョコをはさんだものです。
このラングドシャ、焼くときに焦げないように気をつければおうちでも作れますので、レシピをご紹介しましょう。
絞り出すときは、猫さんの舌をイメージして、薄く、細長く伸ばしてくださいね。
【材料】
●バター(無塩)…45g
●粉糖…45g
●卵白…1個分
●薄力粉…50g
●バニラオイル…少量

【作り方】
①常温に戻したバターを練って混ぜてクリーム状にし、粉糖を加えてさらに混ぜます。
※バターを泡立てない方がきめがなめらかにできあがります。
②卵白を少しずつ加えて混ぜ、バニラオイルも加えます。
③ふるった薄力粉を加えてよく混ぜます。生地につやが出るまでしっかり混ぜましょう。
④ラップをして、室温で約30分間休ませます。
⑤オーブンペーパーを敷いた天板に、丸口金(直径7㎜程度)で長さ5㎝程度に絞り出します。
⑥170度のオーブンで約8分間、縁が色づくまで焼きます。
※焼き色は周囲にだけで、中心は白く焼くと上品に仕上がります。
※色がつき始めると、すぐに全体が色づき、ヘタをすると焦げてしまいますので、タイマーを短めにセットしてつきっきりで見ていましょう。
(作り方指導:望月亜紀子)

ネコセカイ 猫舌 langue de chat<ラング・ド・シャ>

 

猫舌の構造

●舌のザラザラ

猫さんのピンクの舌は、薄くってザラザラしていて、他に類を見ない特別なもの。
猫さんの舌がザラザラしているのは、『糸状乳頭(しじょうにゅうとう)』と呼ばれるおろし金状の小さな突起が生えているからです。
この突起は、のどの奥の方に向かって生えていて、後述するようなさまざまな用途に役立っています。
猫さんも年を取ると、この突起が摩耗してくるみたいで、18歳になる弊社猫・ラグ君はあんまりザラザラしていません。

ネコセカイ 猫舌 langue de chat<ラング・ド・シャ>

撮影:Trish_ Hamme2

●味を感じる味蕾細胞

猫さんの舌の真ん中は、ザラザラした突起ですが、その周囲はキノコの形をした「茸状乳頭」(じじょうにゅうとう)があって、その先端部に味蕾(みらい)細胞があります。この味蕾細胞が、実際に味を感知する器官なのです。
舌の裏には、同じく味蕾細胞が集まった「有郭乳頭」(ゆうかくにゅうとう)があり、ここでも味を感じられるようです。
舌のザラザラを生み出す、真ん中の糸状乳頭では、味を感じることはできません。
味覚に関しては、猫さんより人の方が繊細だといえるでしょう。

ネコセカイ 猫舌 langue de chat<ラング・ド・シャ>

●舌が出っぱなしのワケ

舌の表面は粘膜で覆われていますが、内部は筋肉で出来ているのでかなり自在に動かせます。猫さんの舌の動く速さは、秒速76.2㎝というから驚きです。グルーミングの時は、1秒に舐める動作を3~4回繰り返します。長い間、疲れることなくグルーミングできるのもこの筋肉があればこそですが、あんまり長くこき使うとやっぱり息切れしてしまいます。
ときどき猫さんが舌をしまい忘れて出しっぱなしにしていることがありますよね。猫さんが安心しきってリラックスの余り、筋肉が弛緩しているということもありますが、毛づくろいのしすぎで疲れていても出しっぱなしになってしまいます。

●舌にいる菌

猫さんのお口の中には、常にパスツレラ菌とカプノサイトファーガ・カニモルサス菌がいます。これらは、猫さんに悪さをする菌ではありませんが、人が猫さんに咬まれたり、ひっ掻かれたりすると感染します。
感染者の発症割合については、オランダの調査では100万人に0.7人、デンマークでは0.6人との報告もあり、まれな病気といえますが、免疫機能の低下した人においては重症化する傾向にありますので、疲れているときなどには注意が必要です。

 

猫舌の役割

●フォークとナイフ

完全肉食動物である猫さんは、舌のざらざらで物の骨からお肉をこそげ取って食事します。

●スプーン

猫さんのお水の飲み方は上品で、舌をJの字に丸めてひしゃく状にし、水をすくい上げて飲みます。

ネコセカイ 猫舌 langue de chat<ラング・ド・シャ>

撮影:Yuval Y

●ブラッシング

ざらざらの突起は、櫛の歯の役割もして、毛を絡め取ります。
家電メーカーのシャープは、猫の舌の素晴らしさをまねて掃除機を作りました。フィンの表面に、猫さんの舌のような突起を装備。掃除機が吸い込んだゴミを固めて圧縮します。

●体温調節

猫さんには汗腺がなく、汗を掻いて体温調節することができません。そこで、毛を舐めてその気化熱で体温を下げているのです。最近流行りの機能性肌着と同じ原理なんです。

●安定剤

猫さんは、失敗したり、怖い思いをしたりすると、毛づくろいを始めます。
これは、「カーミングシグナル」といって、不安や恐怖を感じたときに自分を落ち着かせるための転位行動のこと。相手に敵意がないことを知らせ、威嚇を和らげるためにも行われます。

●コミュニケーション

猫さん同士でお互いに毛づくろいし合うのは、絆を深めるためのコミュニケーションツール。
舌で舐め合うことで、お互いのニオイをブレンドして、仲間としての認識を高めるのです。

 

猫さんの味覚

猫さんの味覚は、そんなに繊細ではないと言われています。舌の真ん中の大きなスペースを、味を感じられない糸状乳頭が占めているのですから、そういわれてもムリがないでしょう。
ただし、猫さんの味覚に対する研究はとても遅れています。『猫のしくみ』(ピリンチ&デーゲン/早川書房)にもこうあります。『味覚研究のこの遅れぶりは、ペットフードの売り上げが何十億にものぼることを思うにつけ、不思議でならない』。
猫さんがどんな味覚を感じられるかはまだ解明されきっていませんが、酸味、苦み、そして、若干ですが塩辛さも感知できることだけは、どの研究者も異論はないようです。
舌のどこでどの味を感じるかは、人の舌とよく似ていて、奥の方で苦み、先端で塩辛さ、両脇で酸味を感じることがわかっています。
とはいえ、塩辛さはそれほど感じません。塩分所要量が人間の1割と少なく、獲物の肉に塩化物が充分含まれているので、塩味を感じる必要がないためとされています。
猫さんの味覚について、イギリスの生物学者ジョン・ブラッドショーはこう考えています。
猫の味蕾細胞は特に舌先に集中していて、アミノ酸に反応するタイプが最も多い。つまり、猫さんはアミノ酸の味が利きわけられるのだ、と。
アミノ酸というのは、タンパク質(つまりお肉)を構成する物質です。猫さんの舌は、よいタンパク質と悪いタンパク質の味の区別がつくらしいのです。
別の研究者も、肉食動物は、自分と同じ肉食動物よりも草食動物の方が美味しく感じられると述べています。
チーターの好物は、ふだん果物をたっぷり食べているトムソンガゼル。トラも、果物や植物の地下茎を食べるイノシシが大好き。イエネコも、雑食のネズミよりも牛肉の方が好みだといいます。なぜなら、牛は草食で、ブラッドショーの言い方を借りれば〝アミノ酸がいい〟からです。
雑食である人間と、完全肉食の猫さんとを比較して、軽々に「味覚はそんなに繊細ではない」といってはいけません。
猫さんには猫さんの、華やかで豊かな〝アミノ酸的味覚の世界〟が広がっているかもしれないのですから。

 

ネコセカイ 猫舌 langue de chat<ラング・ド・シャ>

 

記事協力 / 猫とも新聞
2020年1月30日更新

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