【コラム】Vol.12 猫さんのへの字口 / 猫さんに関するあれやこれや
Vol.12 猫さんのへの字口
新型コロナウイルスの影響で、なんだか世間全体がひっそりした雰囲気になっています。せめて、可愛い猫さんの話題をお届けして、ほっと一息継いでいただきたいと願い、今月は猫とも新聞78号の巻頭記事を改訂・補足して、「猫さんの口」についてお届けいたします。
小さく見えて実は大きい
俗に「外面如菩薩内心如夜叉(げめんにょぼさつないしんにょやしゃ」などと申します。外からは菩薩のごとくやさしく見えるけれど、内面は夜叉のように邪悪で恐ろしいという意味ですよね。浄瑠璃の世界では、美しい娘が一瞬で鬼に変わる『ガブ』という仕掛けが施された人形で表現されます。
おちょぼ口のお姫様が、一瞬でがばっと口を開けて鬼の形相に…。おお、怖ぁ。
でも、あれ?どこかで同じようなものを見た記憶がありませんか。
そうです。猫さんの大あくびです。
可愛らしいへの字口が一転、耳まで裂けた大きなお口に。
大きなお口が、なんで普段は小さく見えるのでしょう。下図のように、ウィスカーパッドなどでうまくお口が隠れるためです。特にアゴを引いていると、猫さんのお口はおちょぼに見えます。
猫さんのお口がへの字に見えるのは、お腹を出して眠っていたり、近づいて猫さんを下から見上げたときなど。かなりの信頼関係がないと、への字口を見ることはできません。
猫さんが「への字口」を見せてくれるのは安心の証なのです。
図解 なぜおちょぼに見えるのか
への字口大解剖
●1. マズル【Muzzle】
お口の周りの〝ω〟に見える部分をマズルといいます。口吻とも呼ばれますね。
好奇心に駆られると、おひげがピンと前を向き、マズルがぷっくりと膨らみます。
●2. 鼻鏡【びきょう】
鼻先の被毛が無い部分。ピンクやブラック、ブラウンなどの色があります。ノーズレザーとも。
●3. 鼻紋【びもん】
鼻鏡のつぶつぶが見えますでしょうか。指紋と一緒で、一匹一匹模様が違います。牛などでは個体認証などに活用されています。
●4. 外鼻孔【がいびこう】
猫さんのお鼻には鼻毛がありません。ハナクソはたまるので、気づいたらキレイにしてあげてください。
この鼻の穴、横から見ると「ハート型」に見える…とネットで囁かれたことがあります。
●5. 舌【した】
ときどき舌をしまい忘れているのは、リラックスしている証。長毛種などの場合、グルーミングが大変なので、疲れ果てて、しまい忘れることもあるようです。
あくびの途中やグルーミング・食事の最中に声をかけると、しまい忘れることがままあります。
●6. 上唇溝【じょうしんこう】/鼻唇溝【びしんこう】
鼻から口にかけて通っている溝は、毛管作用によって常に水分を蓄えており、におい分子を吸着するのに役立っています。
この上唇溝は、ヒトでいうと、「人中」(にんちゅう/じんちゅう)と呼ばれる鼻の下の溝に相当します。おそらく、進化の過程で退化した痕跡だろうと考えられています。
●7. 口唇【こうしん】
唇が赤いのは人間だけです。ヒトの舌が赤いのは、粘膜と皮膚の中間のような組織だから。血管が透けて、赤く見えるため、〝紅唇〟と呼ばれます。
一方、猫さんの唇はゴムのような感触。お鼻や肉球と同じで、ピンクだったり、ブラウンだったり、黒だったり、斑が入っていたりします。
●ピンクのクチビル
●黒いクチビル
●茶色いクチビル
●ピンクに斑入りのクチビル
●猫の鼻が濡れているのは?
猫さんのお鼻は冷たくて、ふだんはしっとりと湿っています。
これは、鼻の内側にある「腺細胞」から分泌される液体が、鼻の表面にジワーとあがってきているから。この分泌液は少し粘り気のある液体で、ニオイの分子をキャッチする役目があります。猫さんのお鼻が濡れているのは、より敏感にニオイを嗅ぐためなんですよ。
分泌液を作る活動は睡眠中は低下するので、寝ているときや寝起きの鼻は乾いています。
●猫さんのお鼻は温度センサー
お鼻の役割でもうひとつ重要なのが、温度を測ること。
猫さんは温度変化に鈍感で、ストーブにべったりくっついて寝ていて低温ヤケドをしてしまうこともあるほど。昔は、かまどの中で寝ていて、おき火で毛を焦がす仔もいました。
けれど、鼻だけは温度に敏感で、吸い込んだ空気で温度を測ります。わずか0.2度の温度上昇や0.5度の温度低下もわかるという説も。ストーブで低温ヤケドをするくせに、へんなところは敏感なのです。
記事協力 / 猫とも新聞
2020年8月20日更新