【コラム】Vol.13 猫さんのゴロゴロ♪ / 猫さんに関するあれやこれや
Vol.13 猫さんのゴロゴロ♪
〜そのノドを鳴らすのはあなた〜
猫さんと暮らしている醍醐味のひとつに「猫さんのノドを鳴らす」というのがあります。頭やのどを撫でてあげた時に、猫さんが目を細めて「ゴロゴロゴロ…」。こちらまで嬉しくなって「そんなに私のことが好きか~」とヤニ下げている飼い主さんも多いはず。
今月は猫とも新聞28号の巻頭記事を改訂・補足して、「猫のさんのノド鳴らし」についてお届けいたします。
そもそもノド鳴らしって?
そもそも猫さんがノドを鳴らすのは、お母さんのお乳を飲んでいるときの「合図」です。
まず、お母さん猫はノドをごろごろ鳴らして、「ママはここよ、おっぱいの準備ができたわよ」と知らせます。幼い仔猫はまだ目が開いていませんから、音で知らせてあげる必要があるんですね。それに声と違って、振動ですから敵にも見つかりにくい。生きるための知恵なのです。
仔猫は仔猫で、ママのおっぱいを上手に飲めたとき、うれしくっておいしくってノドをごろごろ鳴らします。ママは、そのごろごろを聞くだけで、寝転がったままでも我が仔が上手にお乳を飲めているのを確認できるのです。だから、猫さんは、ごく幼いうちからノドをごろごろいわせることができるのです。生後3~4日には鳴らしているという説と2週間後には鳴らし始めるという説がありますが、個体差もあるかもしれません。
そして、こうした「幸せの経験」を踏まえて、大人になっても、うれしいときなどにノドをごろごろ鳴らすようになるのです。
どうやってノドを鳴らすの?
猫とも新聞が「ノド鳴らし」を特集した当時は、猫さんがノドを鳴らすメカニズムは解明されていない謎のひとつでした。けれど、現在では、ほぼほぼこうではないか…という意見が固まりつつあります。
確実にわかっていることは、猫さんには特別な「ノド鳴らしごろごろ装置」は備わっていないということです。スズムシなどは音を出すために前羽根が発音器になっていますが、猫さんにはこういった器官はありません。
では、どうやってノドを鳴らすのでしょう。以前は「胸腔説」「軟口蓋説」「血流説」「喉頭筋説」などさまざまに憶測されていましたが、今は「喉頭筋説」が本星だとされています。これは、ノドの筋肉を収縮させて素早く声門を収縮・膨張させ、ノドをならすというもの。
2007年にカレン・マーコム博士らサセックス大学の研究チームが発表したリポートによれば、猫さんは声帯の下の筋肉をゆっくりと振動させることでノドを鳴らすのだとか。この動作では声帯そのものは使われないため、猫さんはノドを鳴らしつつ、同時にニャーなどと鳴くこともできるのだというわけ。
今のところ、ノドの筋肉を張動させることでノドを鳴らしているという説が一般的のようですが、ノドの切開手術をした猫さんがごろごろ言っているという報告もあり、まだまだ確定はされていません。さらなる研究が待たれます。
他の国ではなんという?
「ノドを鳴らす」や「ごろごろ」は、他の国ではなんというのでしょう。
調べてみると、「throat rings(ノドが鳴る)」といった言い方ではなく、「ゴロゴロ」に該当するような擬声語が多いみたい。猫さんのごろごろを表現するには、硬い物言いより可愛い擬声語のほうが似合うのかもしれません。
英語/Purr/パー
たまに「パーミング」というカタカナ表記己を見かけますが、正しくは「パーリング」だと思われます。
フランス語/Ronron/ロンロン
スペイン語「Ronroneo(ロンロネオ)」、ポルトガル語でも「Ronron(ホンホン)」。中国語も「隆々(ロンロン)」です。
イタリア語/Fusa/フーサ
ちなみに猫の鳴き声・にゃーはMiagolare(ミャゴララーレ)です。可愛い。
ロシア語/Mppp/ムルルル
キリル文字の「p」はアルファベットの「r」にあたるそうです、ラテン語でも「murmurllum」というそうです。
ハンガリー語/Dorombolas/ドロンボラス
うーむ。…日本人からすると、あまりビンとこない表現現です。ハンガリー文化に詳しい方の報告をお待ちしたい。
ドイツ語/Schnurren/シュヌッレン
うーむ。日本人からすると…(以下同文)。ドイツ文化に詳しい方…(以下同文)。
フィンランド語/Kehraava/ケッヘラーヴァ
猫のことは「kissa(キッサ)」といいます。「猫喫茶」ではありません。猫=キッサです。
アイスランド語/Mala/マーラ
いろんな言い方・聞こえ方があるものですね。他の国なんというのか、ご存じの方はぜひご一報ください。
その『ごろごろ』はどんな意味?
いいごろごろと悪いごろごろの見分け方
猫さんの「ごろごろ」は、母と仔のコミュニケーションから生まれました。これがやがて、成猫同士や人とのコミュニケーション手段にまで発展しています。そして、一見、同じような「ごろごろ」でも、さまざまな気持ちを表現しているんですよ。
【ん~、満足♪幸せ♪】
ノドを撫でてあげると始まるノド鳴らしがこれ。「気持ちいい♪」がごろごろになって表れているんです。
隣でうたた寝していた猫さんが、とつぜんノドを鳴らしはじめることってありますよね。あれは、うとうとしていて、ふと我に返った猫さんが、そばにあなたがいることに気づいて、なんともいえない満足感で思わずノドを鳴らしてしまうんでしょうねえ。
この「満足のごろごろ」は、高からず低からずの「中音域」。穏やかで心地よい響きを持っています。「満足のごろごろ」がどんな響きかを注意深く観察しておくと、それ以外のごろごろが持つ意味をいち早く察知できます。
【ねえ、お願い!!】
お母さん猫のおっぱいを飲んでいた頃のように、甘ったれた気分になったり、なにかしてほしいときにもノドをならします。「ねえ、撫でて」とか「お腹空いた」とか。
前述のカレン・マーコム博士らの研究はもともと科学雑誌「カレント・バイオグラフィ」誌に発表されたもので、主たる内容は「猫はノドを鳴らして人間を思い通りにする」というものでした。それによると、要求があるときの「ごろごろ」は「赤ちゃんの泣く声に似た」高い周波数が合まれているんだそうです。これを聞くと、人は居ても立ってもいられない感じになって猫さんのために急いでなんとかしなければという気持ちになるだとか。その切迫した感じは、猫さんと暮らしたことのない人にも伝わるそうです。
カレン博士らは、猫は人の心の傾向を把握していて、人が無視しがたい音を「意図的に」発していると考えているんだそうです。
ううむ、猫さん、おそるべし。
【いい子いい子】
少し具合が悪いときとか気持ちがふさいでいるときなど、あなたがしょんぼりしていると、猫さんがそっとそばに寄り添ってノドを鳴らしていることに気づくでしょう。小さく、さりげなく響くごろごろで、猫さんはあなたに「いい子いい子」をしてくれているのです。
その証拠に、ノドを鳴らす猫さんがそばにいてくれるだけで、気痔ちがぐ~んと楽になるのを感じるはずです、
【落ち着け、オレ】
逆に、猫さんが動揺したり、驚いたときには、猫さんは自分に対して「いい子いい子」するためにノドを鳴らします。そうして、気分を落ち着かせ、心を平静に保とうとするのです。
【痛いよう 苦しいよう】
酷いケガをしたときや出産するとき、それからいまわの際にもごろごろいうことがあります。ただ「痛い、苦しい」ということを伝えるだけでなく、このごろごろには治療効果もあるといわれています。
このときのごろごろは、「満足のごろごろ」より低い音。20~100Hzの低い音を単調なリズムで繰り返すそうです。
ふだんから一緒に暮らす猫さんのごろごろによく耳を傾け、どんな音がいつものごろごろなのか、今聞いているのは高めなのか低めなのか観察しておきましょうね。
記事協力 / 猫とも新聞
2020年9月25日更新