あれやこれや / 猫とも新聞

【コラム】Vol.27 猫さんとクリスマス

猫に関するあれやこれや

Vol.27 猫さんとクリスマス

メリークリスマス♪
新型コロナや自然災害など、今年もいろいろとございましたが、なんとなく明日がみえてきたような気分ですね。
今年は、楽しいクリスマスが迎えられますように。そんな祈りを込めて、今月は既刊号ではなく、最新号（2021年12月・通巻139号）の第2特集をまるっとご紹介します。
皆さまに素敵な聖夜がおとずれますよう。

額のＭ字はマリア様のＭ？

イスラム教では、猫さんの額にあるＭ字マークは、猫好きで知られる創始者・ムハンマド・イブン＝アブドゥッラーフが撫でた跡とされ、〝ムハンマドのＭ〟と呼ばれています。
一方で、キリスト教にもこんなお話が伝わっています。
神の子イエス・キリストが誕生した日、世界は喜びに包まれました。
猫さんたちも例外ではなく、みんなでお祝いに行こうと相談しました。そこで、大勢連れだって、聖母の元へ祝福しに行ったのだそうです。
ところが、大勢の猫にぞろぞろ来られて、マリア様もびっくり。けれど、猫たちもお祝いに来たのだと聞いて、マリア様はおおいに安心したのでした。
マリア様は、猫の一匹にやさしく手を差し出すと、こうおっしゃいました。
「大事な赤ちゃんにはさわらないでね」。
そのとき、したとき、猫のおでこに手があたって、マリア様の頭文字・Ｍの字のマークが現れたのだといいます。

猫さんは受胎告知と聖家族のアイコンに

古代エジプトの猫の女神バステトは、ギリシャで女神アルテミスに、ローマでは女神ダイアナに同一視されていきました。これが、中世になると、アルテミスと猫の関連の多くが聖母マリアに移行していったと、ミュリエル・ビードルがその著書『The Cat:history,Biology,and Behavior』に書いています。
それによると、猫さんは、受胎告知と聖家族のアイコンとして描かれることがあるのだとか。
例えば、下の絵は、ルーベンスの『受胎告知』。

Peter Paul Rubens『The Annunciation』（1609）

足元に猫がうずくまって、安らかに夢を見ています。ルーベンスといえば、「フランダースの犬」で主人公のネロが見たがっていた絵の作者。むろん、ネロが見たかったのは『受胎告知』ではなく、『キリスト昇架』と『キリスト降架』という作品なのですが、ルーベンスはそれほどまでに偉大な画家なのです。『バロック絵画の王』という称号もあり、なるほど、『受胎告知』も荘厳な雰囲気です。
これが、下の図（ロレンツォ・ロットの『受胎告知』）のように、驚いた様子で描かれていると、〝大天使ガブリエルの登場に驚く猫＝悪魔〟ととらえる向きもあるのでしょうが、ルーベンスの猫は慌てる様子などみじんもありません。

Lorenzo_Lotto『The Annunciation』（1534）

ロットの作品だって、当のマリア様でさえビックリされているのですから、猫さんだって、悪魔だからビビっているのではなく、突然の来訪に驚いているだけとも読み取れます。
猫が受胎告知や背家族の象徴とされるには理由があって、聖母マリアがイエスを出産したのと同じ夜に、ベツレヘムの猫が子猫を出産したというイタリアの民間伝承があるためだと、前出のビードルさんは主張しています。

なぜかサンタは猫を飼う

絵本の登場人物は、さりげなく猫を飼っていることが多いように思います。編集部の蔵書には、テディベアが、ぬいぐるみのクセに猫を飼っているものまでありました。
下は、ロングセラー絵本『さむがりやのサンタ』のワンシーン。

肩に飼い猫のクロが乗っています。サンタさんがお家にいる間、クロはずっと肩に乗っていて、とっても仲良し。
他にも、贈り物を配っている最中にはぐれたサンタさんと白猫の物語を描いた『サンタクロースの白い猫』とか、その続編で、サンタさんの家の洋服だんすで生まれた３匹の仔猫を描いた『クリスマスのこねこたち』、捨てられた仔猫とサンタさんのお話『こねこのクリスマス』『こねことサンタクロース』などなど、サンタさんと猫の交流はいつだって温か。今年のクリスマスは、サンタと猫の絵本で暖まりませんか。

さむがりやのサンタ
文と絵：レイモンド・ブリッグズ　訳：すがはらひろくに　福音館書店

クリスマスのこねこたち/サンタクロースのしろいねこ
文：スー・ステイントン絵：アン・モーティマー　訳：まえざわあきえ徳間書店

こねことサンタクロース
文：ユッタ・ゴアシリューター絵：アナトリブーリキネ訳：木本栄　ひくまの出版

こねこのクリスマス
文：なかえよしを絵：上野紀子教育画劇

まだまだ人気「猫と和解せよ」

一時期、ネットで一世を風靡したネタですが、最近は見かけなくなりました。聖書の一節を、黒字に白や黄の文字で大書した、通称「キリスト看板」をご覧になったことはありませんか。これに画像処理を施して、〝神〟の字の一部を消し、〝ネコ〟とした「ネコと和解せよ」シリーズ。他にも「ネコを認めよ」「永遠のネコ」「唯一のネコ」などのバリエーションが生まれたものです。
〝最近、見ないな～〟と調べたところ、ａｍａｚｏｎでは、まだステッカーやＴシャツが売られていました。下のステッカーは、耐水・耐候を施した84×１０８㎜サイズで、お値段は税込６９９円。他にもＴシャツが税込１８１８円、「聖書」を「清酒」とひっかけて、「三芳菊無濾過生原酒ネコと和解せよ７２０㎖」なんてのも売られていました。
人気はまだ健在です。

今振り返る「猫の十戒」

〝最近、見ないな～〟で思い出したのが、やはりネットで一世を風靡した『猫の十戒』。2012年ごろが初出でしょうか。最初は「猫篇」だけでしたが、その後、「飼い主篇（18戒）」も生まれました。
2012年ですか…。もう10年経つんですね。10年前だと若い読者さんには知らない方もあるかと思いますので、この機会にご覧いただこうかと思います。
「猫篇（図は原文）」「飼い主篇」を一挙掲載です。

猫の十戒（猫篇）

第一戒　私の生涯はだいたい15 年くらいしかありませんが、たまに20 年以上生きてしっぽが裂けます。ほんのわずかな時間でもあなたが離れていると腹が立ちます。私が家族になってやるので、そのことを覚悟しなさい。
第二戒　あなたが私に望むことを理解するつもりはありません。待っても無駄です。
第三戒　私を崇拝しなさい。私にとってそれが一番大事なことなのです。
第四戒　私を長い時間叱ったり、罰として閉じ込めたりしてはなりません。でも狭いところは好きなのでダンボール箱を用意するのは許可します。あなたには仕事や楽しみもあり、友達だっているかもしれませんが、私のお世話をすることに勝る悦びはないはずです。
第五戒　私に話しかけなさい。あなたの話していることが何かはどうでもいいですが、話しかけるあなたの声はわかるのです。ほめ言葉は特に。
第六戒　あなたが私にどんなふうにしてくれたか、私は決して忘れません。恨みは倍返しします。
第七戒　私をたたいたりする前に思い出しなさい。私の歯はあなたの手の骨をかみ砕くことぐらい簡単にできるのに、気が向いたときにしかかまないようにしていることを。
第八戒　私が言うことを聞かないと怒る前に、まずは自分に問い掛けてみなさい。たっぷり食事を与えてましたか？　それは私の好きなシーバですか？日なたで気持ちよく昼寝をしているのをじゃましませんでしたか？　もしかすると年を取って体が弱ってきているのかもしれませんが、どのみち私がしたいことに従わないほうが悪いのですから、あきらめなさい。
第九戒　私が年をとっても世話をしなさい。あなたも同じように年をとりますが、私は年をとってもかわいいのです。
第十戒　最期の旅立ちの時には、そばにいて私を見送りなさい。「かわいそうで見ていられない」とか「私のいないところで逝かせてあげて」なんて言うのは許しません。なでなさい。なで続けなさい。かわいいね、いい子だねと言いなさい。言いまくりなさい。そうすれば私は着換えの時間を少し短くしてやってもよいです。まあ、気が向いたら。

猫の十戒（飼い主篇）

汝、人間がモデムを使っているときは、キーボードに飛び乗ることなかれ。
汝、モデムの後にある電話線を抜くことなかれ。
汝、トイレットペーパーをロールから全部引っ張り出すことなかれ。
汝、透明ではないのでテレビやモニターの前に座ることなかれ。
汝、冷蔵庫の上から勢いよく吐き戻すことなかれ。
汝、ディナーパーティーのときにやってきて、尻を舐めることなかれ。
汝、人間の顔の上に尻を向けて横たわることなかれ。
汝、高いところから人間の股間に飛びかかることなかれ。
汝、どんなに速く走ろうとも、閉まったドアを通り抜けることはできない。
汝、目覚まし時計の上を歩いてタイマーをリセットすることなかれ。
汝、蝶番付きのフタが開くごみ箱に乗って、落っこちる罠にはまることなかれ。
汝、人間が腰掛けようとした瞬間にトイレの便座に飛び乗ることなかれ。
汝、午前４時に眠っている人間の膀胱の上にジャンプすることなかれ。
汝、家とは機会があれば逃げ出せる刑務所ではないことを悟るべし。
汝、人間の歩みがいかに遅くとも、つまずかせることなかれ。
汝、家にゲストがいるときはトイレのドアを押し開けることなかれ。
汝、汝は肉食動物であり、観葉植物は肉ではないことを思い出すべし。
汝、叱られたときには後悔してみせるべし