【コラム】Vol.28 猫っ毛

猫に関するあれやこれや

Vol.28 猫っ毛

今年は、2022年(ニャオニャーニャー)の年ということで、猫好きさんの間ではたいそう喜ばしい年とされています。2月22日などたいへんな賑わいとなることでしょう。今年も、ふわふわモフモフをよろしくお願い申し上げます。
そう。猫さんはよく〝毛玉〟とか〝モフモフ〟とか称されます。猫さんの手ざわりは、すべすべあるいはほわほわで、どんなに嫌がられようと頬ずりしたくなるものです。
一方で、猫さんの毛は〝猫っ毛〟などと、コシのない髪質の蔑称に使われます。
猫さんの毛は本当に猫っ毛なのか。その心地よさのヒミツはなんなのか。今月は、2017年8月号(通巻87号)の巻頭特集を加筆・抜粋してお届けいたします。

 

Photo by megan ann

 

猫さんは毛深い

猫さんは、ご存じの通り、全身毛だらけです。
当たり前じゃないかって?
いえいえ、猫さんは、動物界でもかなり特別な毛だらけなのです。その証拠に、『図解 猫の解剖アトラス』(インターズー/2016年9月)には、次のように記述されています。
『多くの動物種とは異なり、猫の皮膚は完全に柔毛で覆われている』。
たとえばお猿さんは、顔に毛が生えてない種が多いですね。また、お腹部分の毛が薄かったり、睾丸に毛が生えていない動物も多いです。カバにいたっては、口のまわりや眼、しっぽの先にしか毛が生えていません。その点、猫さんは、カラダはもちろん、脇の下もお腹も、睾丸ももっふもふ♥きちんと毛に覆われています。毛が生えていないのは、鼻と肉球くらいなものでしょうか。耳にも毛が生えていますが、耳介と耳の前部分の毛は、長毛猫さんでも比較的薄くなっています。
余談ですが、ワンコの場合は、睾丸やおちんちんもトリミングするんだそうです。ワイアーフォックステリアファンシャーのyoshyさんによると、排泄物がつきやすい部分なので、ワンコ専用のバリカン(クリッパー)でキレイにするんだとか。お腹の毛も、犬種によってはバリカンで整えられます。
ワンコって、愛情を注ごうと思えばいくらでも注げるんですね。ちょっとうらやましいかも…。

 

毛の役割

猫さんの毛は、美しくてしなやかなだけでなく、猫さんの身体にとっても、重要な役割を果たしています。

● 衝撃を吸収するクッション

どこかに身体をぶつけたとき、あるいは何者かに爪や牙で襲いかかられたときなど、毛があることで衝撃を吸収し、また、直に皮膚を破られることを妨いで致命傷にならないように守っています。

● 防水

毛の根っこの部分・毛包には皮脂腺があって、分泌物(脂分)を出して皮膚や毛の乾燥を防ぎます。同時に、この分泌物は水や細菌感染・紫外線によるダメージを遮断する役割を担っています。
ただし、この分泌物はあまり十分にいきわたらないため、それほど水を弾きません。
猫さんが水に濡れるのをいやがったり、静電気が起きやすかったりするのはこれが原因のひとつです。

● 体温調節

暑い季節は薄めの夏毛、寒い時期は厚めの冬毛に生え変わることで、体温調節をラクにしています。
また、毛の毛包は、それぞれ立毛筋という小さな筋肉につながっていて、この筋肉を収縮することで毛を逆立てます。
毛が逆立つと、体毛の間に暖かい空気の層ができ、体温が外気中に逃げ出さないようになって寒さから猫さんを守ってくれるのです。

● 威嚇

立毛筋を使って毛を逆立てる理由はもうひとつ。
ライバルを威嚇するときは、毛を立てることで自分の体を実際よりも大きく見せようとがんばります。これが〝恐怖〟からくる場合もあります。

 

Photo by Benutze

 

手ざわりのヒミツ
~猫さんの毛はなぜ心地よいか~

一般に、普通のウールよりカシミヤの肌ざわりの方が心地よいといわれています。
日本で始めてカシミヤの紡糸をした東洋紡糸のサイトによると、カシミヤと羊毛の風合いの違いは、繊維の太さとキューティクルの大きさによるもの。
ウールの平均直径が19~24ミクロンなのに較べ、カシミヤは14~16ミクロンとかなり細くなっています。
キューティクルも、カシミヤはまばらで突起が小さく、肌を刺激しにくくなっています。
そこで、猫さんの毛を他の動物の毛と比較してみました。比較したのは、アカギツネ、ミンク、イエネコの3種。
毛の細さは以下の通り。単位はすべてミクロンです。
アカギツネ 上毛 92 下毛20
ミンク 上毛145  下毛15
イエネコ 上毛 85 下毛20
なんと!猫さんの毛はミンクより細いじゃないですか!!
では、キューティクルはどうでしょう。左が3者のキューティクル。毛の先端から太くなり始める部分で較べてみました。なんだか猫さんのキューティクルがいちばん形が整っていて小さく、繊細のような…。
猫さんを撫でたときのあのすべらかな感触はここからきているのですね。その心地よさは、もしかしてミンクを越えているのかもしれません。

● アカギツネ

● ミンク

● イエネコ

出典:「日本産哺乳類毛図鑑」(近藤敬二著/北海道大学出版)

 

猫っ毛をよ~く見てみよう
~アグーチの神秘~

Photo by Kersti

 

上の写真は、猫さんの毛を顕微鏡で拡大したものです。
画像が若干粗めですが、黒と茶と互い違いになっているのはおわかりいただけると思います。
一本一本の毛に全部縞模様があるなんて、スゴいですよね。
この縞模様は、「アグーチ(agouti)パターン」といって、キジ猫さんをはじめ、柄のある猫さんの毛にはみんな見られるものです。
南アメリカ大陸の北東部に分布している齧歯目パカ科の動物・アグーチがこの毛並みを持つことから、アグーチパターンと名付けられました。一見すると単色に見えるアビシニアンも、一本の毛を見ると縞模様のアグーチパターンを持っています。その縞模様がとても細かいため、全体的にゴマ塩状に見えるのですね。
この柄は、アビシニアンに特徴的なもので、「ティックドタビー」と呼ばれます。ソマリやシンガプーラの被毛もティックドタビーです。
エジプトのミイラを調べたという調査結果では、埋葬されたすべての猫がキジ猫だったといいます。
やがて、突然変異でアグーチパターンを作る遺伝子が働かない仔(ノンアグーチ)が生まれ、黒や白の単色の猫が誕生しました。アグーチパターンが細かいティックドタビーは、古代エジプト時代からあるともいわれ、かなり古い時代に生まれたものだとされています。

ところで、この縞模様はどうやってできるのでしょうか?
毛を黒く染める黒色系素(ユーメラニン)は、メラニン細胞刺激ホルモンがメラノサイト(メラニン形成細胞)を刺激することで作られます。
ところが、アグーティ・ペプチドというたんぱく質が出張ってくると、黒色メラニンが作られず、黄褐色のフェオメラニン(黄褐色)が作られます。
アグーティペプチドによって、スイッチオンとオフが繰り返され、そのたびに、毛色黒→黄褐色→黒…と染め分けられていくわけです。

 

換毛期は毎日?

猫さんには冬毛と夏毛がありますから、毛が生え替わるのは春と秋の2回だけと思われがちです。
けれど、猫さんの毛の生え替わりは、〝せーの〟で全身が生え替わるのではなく、あっちが抜けたり、こっちが抜けたりモザイク様に換毛していきます。
そのうえ、毛の成長は光周期にたいへん敏感。つまり、電灯という人工の灯りを浴びている室内飼いの猫さんは、年がら年中換毛期という可能性も出てくるのです。
前出の「図解猫のアトラス」にもこう記されています。「寒冷地において多くの時間を過ごす猫は、春と秋の年2回脱毛する。健常な屋内猫は、一年を通して脱毛する」と。
だから、おうちの仔は、毎日ブラッシングしてあげてくださいね。

Photo by ゲタゲタ

 

記事協力 / 猫とも新聞
2022年1月22日更新

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