【コラム】Vol.29 猫の皮はなぜタプタプか?

猫に関するあれやこれや

Vol.29 猫の皮はなぜタプタプか?

季節はようやく春めいてまいりました。雑誌の企画も今後「ダイエット」が多くなることでしょう。人も猫も、冬の間にすかりお腹周りがタプタプに…。
でも、猫さんのタプタプ、実は肥満と関係ないのかもしれませんよ。猫さんの身体をよく観察すると、首やらほっぺやらの皮がやけに伸びることの気づかれるかと存じます。
猫さんにかぎらず、私たちほ乳類の前身は〝皮〟に包まれています。本多久夫兵庫大学教授の『形の生物学』によると、「身体は袋でできている」んだそうです。〝袋〟、つまり〝皮〟のことです。猫さんをもっと詳しく知るには、猫さんを形作っている皮について知らなければなりません。
そこで、今月は、猫さんの皮を探求していきましょう。2019年3月号(通巻105号)の巻頭特集を加筆・抜粋してお届けいたします。

 

 

ほっぺの皮

人間界では、よく厚かましい人のことを〝ツラの皮が厚い〟なんて言いますが、猫さんの世界ではちょっと事情が違います。猫界で〝ツラの皮が厚い〟ことになるのは、去勢されていないオス猫さんです。
幼かった仔猫が成長し、おおむね6月齢を越える頃になると、猫のカラダは大人へと変わる時期に入ります。『第二次性徴』です。オス猫さんの場合、カラダがより筋肉質になり、陰茎には棘が形成されます。そして、顔周りの皮膚が厚くなって凛々しい顔つきへと変わるのです。
オス猫には、ナワバリやメスを男同士で奪い合う生存競争が待っています。猫同士の喧嘩で狙うのは、相手の頬のあたり。なるべく重篤なキズを負わせずに決着をつけるための配慮で、ココを噛むのだといわれています。そこで、来たる決戦のときに備えて、ほっぺの皮を厚くする必要があるのです。
第二次性徴が来る前に、去勢手術を受けると。オス猫さんらしいほっぺは形成されず、いつまでも仔猫らしい姿が保たれます。

Photo by Nickolas Titkov

 

首の皮

猫さんの皮はほっぺだけでなく、首もよ~く伸びます。
母猫が仔猫の首をくわえて運ぶことはよく知られていますが、このために、猫さんには首を捕まれるとおとなしくなるという習性があります。

Photo by とびうお

 

これは「クリップノーシス」あるいは「PIBI(Pinch Induced Behavioral Inhibition)」と呼ばれる自然な反応で、日本語だと「つまみ誘発性行動抑制」といわれています。
埼玉県和光市にある理化学研究所脳科学総合研究センターが2013年に発表した研究によると、母マウスに首筋をつままれた状態で移動している仔マウスには、「動きの減少」と「鳴き声の減少」、「心拍数の低下」といった鎮静反応が見られたといいます。
この反応は、オス猫さんもよく知っていて、交尾の際には首筋を噛んでメス猫をおとなしくさせるという形で応用しています。
ということは、これを猫さんが嫌がる治療にも応用できるかもしれません。獣医さんや獣看護師さんは、猫さんをおとなしくさせるために、指で首筋を掴む「スクラッフィング」というテクニックを使います。
2016年にイタリア・ピサピサ大学で行われた実験によると、スクラッフィングよりもピンチで首筋を挟んだ猫の方が、心拍数増加や瞳孔散大が少ないという結果が出ました。
ただし、ストレスを受けると増加する血漿コルチゾールの値には差が見られなかったため、今後も調査を重ねていくとのこと。
とりあえず、爪切りを嫌がる猫さんには、首筋の皮を握って安心させてあげるといいみたいですね。

 

背中の皮で脱水症状チェック

寒くなると、猫さんはお水の冷たさを嫌って、あまり水を飲まなくなることがあります。 なのに、暖房でカラダはカラカラに乾いていますから、脱水症状が心配されます。背中の皮でカンタンに脱水症状チェックがでいますので、ご紹介しましょう。
① まずは、猫さんが「撫でて~」とすり寄ってきたときやうとうととまどろんでいるときを狙います。
② 背中の皮をそっとつまんで持ち上げます。
③ つまんでいた手を放します。

お疲れ様でした。チェックは完了です。手を放した皮がなかなか戻らないようであれば、脱水症状のサイン。すぐに獣医さんに相談してくださいね。

 

お腹の皮

ルーズスキン またの名を猫のエプロン〟~その正体はプライモーディアルポーチ」だった!!

 

痩せているのにお腹の皮が余っている仔を見ると、つい「太っていた仔が急激に痩せて、それで皮が余っちゃったのかしら?」などと思いがちですが、そうではありません。この余った皮は、「ルーズ・スキン」「猫のエプロン」などの名称で呼ばれる、猫の身体的特徴のひとつです。

Photo by Borcard Serge

 

この〝だぶだぶ〟、もうひとつ、かっこいい名称があります。
その名も「プライモーディアルポーチ(primordial pouch)」!!
かっこよすぎて覚えられません。
その意味するところですが、プライモーディアル(primordial)は「原始的な、根源的な」あるいは「最初からある」という意味を持ちます。ポーチ(pouch)は、皆さんもご存じの小さなバッグのことです。カンガルーの袋も〝ポーチ〟と呼ばれます。
つまり、あの〝だぶだぶ〟は原始の小袋なのでありました。
その役割としては、今のところ、以下の説が有力です。

 

● たくさん食べるため

モーディアルポーチは、猫さんだけでなく、トラやライオンといった大型のネコ科動物にもあります。こうした野生の大型ネコ科動物は、毎日エモノにありつけるわけではありません。そこで、エモノをゲットしたときに「まとめ食い」をすることになります。
どんどんたくさん食べられるように、皮が余っているのではないか…というわけです。

● お腹をしっかり守るため

最初にご紹介した「ほっぺの皮」と同じ考え方で、敵の攻撃から身を守るために皮が厚くなっているという仮設です。

● 後ろ足の能力を最大限に生かすため

猫さんはとてもしなやかで、身体を反転させながら着地する、大きく身体を伸ばして飛び降りる、などアクロバティックな動きをします。ネコ科動物は一般的に関節の可動域が広く、後ろ足が大きく動くのです。そんなときにの皮がパツンパツンだったら、キツいジーンズを履いているときに大股を広げるようなものです。動きにくいったらありません。ヘタすると、びりっと裂けてしまうかも…。
そんな自体を避けて、能力を充分に活かすために、モーディアルポーチがあるのだと考えられているのです。
最大限のポテンシャルを発揮するために、日ごろからゆとりを持って備えておく。
それが猫さんの生き方なのかもしれません。ゆとりがあるって、とっても大事なことなのです。

 

記事協力 / 猫とも新聞
2022年2月22日更新

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