【コラム】Vol.37 猫の恋

猫に関するあれやこれや

Vol.37 猫の恋

季節は巡って、春はもうすぐそこまで来ています。今年も、猫さんの恋の季節が巡ってまいりました。最近、都市部では、しっかり聞こえなくなりましたけれど、猫さんが伴侶を求めて泣き叫ぶ、狂おしいような声から「猫の恋」は春の季語にもなっています。
今月は、創刊間もない2011年2月号(通巻8号)の巻頭特集から抜粋して、猫さんの恋についてお届けいたします。

 

 

春は猫さんの恋の季節

たまきはるいのちの声や猫の恋 五十嵐播水
山中に恋猫のわが猫のこゑ 橋本多佳子
「猫の恋」は春の季語です。ご存じのように、猫の発情期は年に数回あり、春ばかりが猫の恋の季節ではありませんが、俳句の世界では立春を過ぎて最初のさかりの季節を季語としています。「猫の恋」だけでなく、「恋猫」「浮かれ猫」「戯れ猫」「猫の彼」「猫の夫(つま)」「猫の妻」「通う猫」「猫さかる」なども季語とされます。
冒頭に挙げた二句のように、猫の恋といえば「あの声」。赤ちゃんの泣き声のようにも聞こえる声は聞いているこちらも気ぜわしく、胸をかきむしられるような気持ちにさせられますが、俳人も感じるところは同じようですね。
冒頭句のうち、五十嵐播水(いがらし ばんすい:明治32年~平成12年:兵庫県生。俳人・医者。ホトトギス同人)の句に出てくる「たまきはる」は「命」などの言葉に係る枕詞。猫のあの声は命の声というべき狂おしい響きを秘めているのです。
ですから、猫の恋を詠んだ句は壮絶な句が多い。
麦めしにやつるゝ恋か猫の妻 芭蕉
猫の恋初手から鳴きて哀れなり 野坡
おそろしや石垣崩す猫の恋 正岡子規
恋猫の眼ばかりに痩せにけり 夏目漱石
目ばかりがぎょろぎょろと大きく見えるほどやつれるなんて、令和の生ぬるい恋愛事情では考えにくい気がいたします。

Photo by Hisashi

 

猫さんの恋模様

猫社会では昔から女性が恋愛の主導権を握っていました。まずはメスネコが発情してフェロモンを振りまき、これに反応してオスネコが恋の季節を迎えるのです。その仕組みを見てみましょう。

●まずはメスネコさんが発情

個体差もありますが、メスネコの場合、おおむね生後6カ月から12カ月くらいで性的に成熟します。恋の季節はおよそ3カ月周期で巡ってきますが、飼育環境や食事の内容、血統や遺伝的な要因など、発情にはさまざまな要因があるといわれています。日照時間に関係あるともいいますね。この場合、太陽光だけでなく、部屋の明かりなど人工的な光源にも反応するといわれています。
恋のシーズンには、数回発情しますので、複数のお相手と交尾することもあるようです。
このため、一度の出産で全然似てない兄弟が生まれることも。「同期複妊娠」とか「過妊娠」とか呼ばれています。

●オスネコさんはメスネコさん次第

メスネコさんは発情すると、くねくねと身をよじらせたり甲高い声で鳴いたりし始めます。このとき、オスネコさんを惹きつけるフェロモンも発散します。
オスネコさんが性的に成熟するのは、メスネコさんよりやや遅め。2~3カ月遅れで成熟します。そして、メスの発情に誘発されて発情します。
反対の見方をすれば、女子さえその気になれば男子はいつでもOKともいえます。
オスネコは発情すると、「スプレー」と呼ばれる特徴的な行動で縄張りを主張するようになります。

Photo by Hosse

●すべては女王様次第

ニオイに惹きつけられた男子たちは、女王様たる女子の周りをぢっと取り囲み、時を待ちます。
女子はここぞとばかり身をくねらせ、甘い声をだして魅力をアピール。やがて、勇気ある男の子が彼女に乗ろうとしますが、彼女にその気がなければ速攻猫パンチ。
あくまで恋愛は女王様次第なのです。女王様にその気がないのに、男子が無理やり押し倒すようなことはないといわれています。
女王様がその気になると、オスがその背中に乗り、首筋を噛んで交尾が行われます。機会があれば男子・女子ともに相手を替えて交尾を繰り返す上、ネコの排卵は交尾の刺激によって行われる「交尾排卵」であるため、妊娠率はすこぶる高くなります。

●男の子はやがて飽きる

ところが、動物行動学者のデズモンド・モリス博士によると、こうした「ばか騒ぎは状況が変わる」そうです。男子たちは恋愛ゲームに飽きてきて、だんだん女王様に飽きてきます。ところが、女王様はいつまでも倦むことをしりません。情けない男子を叱咤激励あるいは鼓舞して、発情期が続く間、交尾を繰り返そうとします。
本能の命じるままに。「女は灰になるまで女」ということでしょうか。

●首を噛む意味

ところで、交尾の最中に、なぜオスネコさんはお相手の首筋などを噛んだりするのでしょうか?
これには「仔猫時代、母親に首筋をつかんで運ばれたことに関係がある」と、モリス博士は説明しています。母猫が仔猫の首を加えて移動中、仔猫が暴れていたら大変です。ですから、猫さんたちは首筋を加えられると、おとなしくなるのです。か弱い男子は女王様を一瞬でもおとなしく支えるのは、これしかないとモリス博士はいいます。こうでもしなければ、女王様のキツいパンチによって「雄ネコは今まで以上に傷だらけ」になるしかないのだそうです。
猫の交尾は十秒程度で終わってしまいますから、「首噛み」の技が効くんでしょうね。

Photo by Koziro Hasegawa

●ちっちゃくて痛い猫のおちんちん

猫さんの排卵は交尾の刺激による「交尾排卵」であると説明しましたが、これに欠かせないのがおちんちんにあるトゲ状の突起。しかも、突起はつけ根の方に向いて尖っているのです。つまり、女王様の体からおちんちんを抜くとき、このトゲが引っかかって痛いのなんの。この痛さが刺激になって、卵子が放出されるのです。
ですから、定期的に排卵がある人や犬と違って猫に生理はありません。交尾した後だけ排卵するので効率も良く、交尾後の妊娠率は9割以上と高い成功率を示します。
雄の猫さんがおうちにいたら、熱心なグルーミングの最中に、おちんちんを見ることができます。大きさはボールペンの替え芯の先っちょより小さいくらい。
でも、そんなちっちゃなおちんちんにも、長い時間の中で整えられてきた生命の仕組みが隠されているのです。

●子だくさんなアダムとイブ

妊娠確率の高い猫さんたちですから、放っておけばドンドン増えていきます。
避妊などせず、子どもたちがみんな無事に生き延びると仮定すると、一体どれくらいになるのでしょうか。計算上では、10年間で八千万匹を越えるそうです。
もちろん、自然環境の中では、この数字のようにはいきません。それでも、多産であることは間違いないようです。ジョエル・ドゥハッス博士によるマリオン島での事例報告によると、この島には1949年にはじめて5匹の猫が持ち込まれたそうです。これが、二十六年後には二千匹に増えたとか。
安産のお守りは「犬帯」より「猫帯」の方がよいのではないでしょうか?

 

記事協力 / 猫とも新聞
2023年3月23日更新

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