【コラム】Vol.49 こねこ
Vol.49 こねこ
necosekaiさんでのコラムは今回が最後となります。
いろんな角度から猫さんのことを探ってまいりましたが、最後の最後はやはり〝こねこ〟という最強の存在で締めくくりたいと存じます。
そこで、今月は、最新号2024年6月号(通巻168号)を加筆訂正してお送りいたします。
今までありがとうございました!!
今度は本誌でお会いできますことを♪
仔猫ならではの魅力
風薫る五月。仔猫の季節でもあります。猫さんは、2月から4月くらいの早春に恋の季節を迎え、妊娠します。妊娠期間は、およそ2カ月、60~67日間ほどですから、ちょうど5~6月にかけてが出産シーズン。保護猫活動をなさっているボランティア団体さんが、悲鳴を上げるほど仔猫の保護依頼が殺到するのもこの季節です。
けれど、仔猫と呼べる時期はほんの一瞬。仔猫ならではの魅力を思い切り楽しみましょう。
●横に着いたお耳
生まれたての仔猫の耳は、お顔の真横についています。もちろん、なにも聞こえません。
猫さんは、耳が良すぎて、むしろ恐怖を感じやすいという説もありますから、なにも聞こえないことは、逆にメンタルを守るための、大いなる自然の知恵かもしれません。
横に着いた耳は、3週間ほどで立ってきます。
●キトンブルー
生まれたての仔猫は、みんな青い瞳をしています。個体差がありますが、だいたい生後1〜2ヶ月程度で本来の虹彩の色へと変わり始め、生後3ヶ月を迎える時にはほぼ色が固定します。そのため、仔猫時代だけの青い瞳は「キトンブルー」と呼ばれています。
●ゴーストマーキング
下の仔は、グレー単色の仔猫ですが、尻尾だけ縞々があるのがおわかりでしょうか?
この縞々、成長するにしたがって、ほとんどが消えていきます。ソリッドカラーの仔猫だけにみられるこの縞々は、「ゴーストマーキング」と呼ばれています。
あの品種の仔猫はどんなかな?
●短足マンチ
短足マンチカンの短足は仔猫時代から。
●折れ耳スコ
折れ耳スコティッシュホールドの仔猫は、やっぱり折れ耳。
●ミニサイズシンガプーラ
もともと小さいシンガプーラ。もっと小さい仔猫ともなると、お目目がやけに大きく見えます。
●裸ん坊スッフィー
無毛の裸ん坊・スフィンクスは、生まれたときからやっぱり裸ん坊なのです。
●デカ耳デボン
大きなお耳が特徴的なデボンレックス。仔猫もやっぱりデカ耳なのです。
●長毛ノルウェイジャン
長毛代表・ノルウェイジャンフォレストキャットは、仔猫時代からモフモフです♪
社会化期 猫さんにとって大切な3~8週齢
単独行動が好きな猫さんでも、ちゃんと社会的な行動を取ることができます。幼いうちに「社会化教育」を受けているからです。
この〝社会化〟というのは、人の場合、一般に「家庭や地域に新しく入った子どもや参入者が、その社会のルールを身に付けること」を言います。
猫さんも、新しいグループに入った場合、そのグループのルールを学ばなくてはなりません。ここで強調したいのは、「飼い猫として暮らしていくうえでより必要とされるのは、対猫ではなく、対人的社会性である」ということ。動物行動学者のジョン・ブラッドショーは、「ネコがペットになるのに最も重要な社会的能力は、ネコとの交流の仕方ではなく、人間との交流の仕方だ}と指摘しています。
ニンゲンがコワいシャーフー猫さんでは、せっかく新しいおうちをみつけても、ストレスだらけのツラい一生を過ごさねばなりません。〝うちの仔〟になったからには、飼い主さんに撫でられたら幸せ。可愛いと褒められたらうれしい、そんな生涯を過ごしてほしいですよね。
そのために、〝人ってよいものだ、やさしいものだ〟と学ぶ時期こそが、3週齢から始まる社会化期。目と耳が開き、歩き始めるこの時期に、自分と母親、そして、世話をしてくれる人間を含めた周囲の世界について学習しはじめるのです。
先に出てきたブラッドショー先生は、獣医のレイチェル・ケイシーとのプロジェクトで、生後3週から8週にかけて、ひとりではなく、多くの人が仔猫に触れて遊ぶことで、その仔猫たちが人に対して非常に友好的になることを発見しています。
また、1990年代にブラッドショー先生が慈善猫保護団体と一緒に行った実験では、最初に人にさわられた時期が遅くなればなるほど、人に対して友好的でなくなるという、まぁ、当たり前といえばあたりまえの結果をみました。
ご著書から結果を抜粋しましょう。
●6週目になってから保護された仔猫は扱うのが簡単ではなくなり、撫でてもめったに喉をならさない。
●8週目まで保護されなかったた猫は扱うのが難しい。
●10週目まで発見されなかった仔は、最初のうちはまるでヤマネコのようだ。
という具合です。例外として、11週齢なのに人懐こかった仔は、ノラ時代に人に世話され、撫でられていた事実が判明しています。
もちろん、保護された週齢にかかわらず、保護センターで多くの人に撫でられ、可愛がられるうちに、大半は人に対して友好的になり、逆に、それまでの淋しさを埋めるように、他の仔よりも人好きになった仔さえいたそうですが、「少数の仔は社会化が難しく、人を寄せ付けなかった」とブラッドショー先生は書いています。
かわいい盛りの仔猫の時代に、人がありったけの愛情で撫で繰り回すことは、猫さんにとっても、人にとっても幸せなことなのです。
ただし、ひとりの人にだけ撫でられた仔は、人見知りで飼い主さんに依存する傾向が出てしまうそうなので、仔猫を迎えたら、お友達を招いて、たくさん可愛がってもらいましょう。
まぁ、弊社猫・嵐山一家のママちゃんみたいに8年経ってなつく仔もいるのですが…。
天使時代を楽しもう
まん丸お顔にでっかいお目目、ちいさな体に見合わない大きな手足。ぽっかりお腹に危なっかしい足取り。
どこをとっても愛くるしい、天使のような存在が仔猫ですが、仔猫時代はほんとうに短いもの。
昔、仔猫のあまりの可愛らしさに、24時間一緒にいたくて会社を辞めてしまったというご仁をインタビューしたことがありますが、「それが正解です」といいたくなるくらい、あっというまに大人猫になってしまいます。
今、我が家に仔猫がいるという幸福なあなたには、今のうちに撫で倒して、写真を撮りまくることを強くおススメいたします。
記事協力 / 猫とも新聞
2024年5月23日更新